歯科矯正治療のリスク
2018年に改正された厚生労働省の医療広告ガイドラインでは、自費診療に係るリスクや副作用を情報提供することも求められています。ことさらリスクばかりを声高に述べたくはありませんが、矯正治療のメリットばかりを述べることも問題があるのだと思います。美しく健康的な歯ならびやスマイルには大きなメリットがあることを理解しつつ、すべての医療と同様に歯科矯正治療にも潜在的なリスクがあることを理解して頂く必要があります。これらのリスクは、「矯正治療を受けるべきではない」というほど深刻なものではないことがほとんどです。
私は、リスクの説明として、いつも車の運転を例に挙げます。あまり認識していないことが多いですが、車のハンドルを握った瞬間から事故に合うリスクは発生しています。その割合は、矯正治療で何かトラブルが起きる可能性よりもはるかに高いと考えられます。しかしながら、医療は専門性が高いためだと思いますが、発生する割合が非常に少ないものでもリスクの説明をしておくことを求められます。当院で治療を開始される場合には、以下の各項目とその対応方法を詳細に説明しています。すべてのリスクや副作用が生じるわけではありませんし、私も経験したことが無いものや経験上0.1%以下といった程度のリスクもありますが、記載しておきますのでご理解のほどお願い致します。
矯正治療の一般的なリスクや副作用について
- 最初は矯正装置による不快感、痛み等があります。数日間で慣れます。
- 歯の動き方には個人差があります。そのため、予想された治療期間が延長する可能性もあります。
- 装置の使用状況、顎間ゴムの使用状況、定期的な通院等、矯正治療には患者さんの協力が非常に重要であり、それらが治療結果や治療期間に影響します。
- 矯正治療中には装置が付いているため歯が磨きにくくなります。むし歯や歯周病のリスクが高まりますので、しっかり磨いてもらったり、メンテナンスを受けてもらったりする必要があります。
- 歯を動かすことにより歯根が吸収して短くなることがあります。また、歯ぐきがやせて下がることがあります。
- ごくまれに歯が骨と癒着していて歯が動かないことがあります。また、ごくまれに歯を動かすことで神経が障害を受けて壊死することがあります。
- 治療途中に金属アレルギーの症状が出ることがあります。
- 矯正治療中に「顎関節で音が鳴る、あごが痛い、口が開けにくい」などの顎関節症状が出ることがあります。
- 様々な問題により、当初予定した治療計画を変更する可能性があります。
- 歯の形を修正したり、咬み合わせの微調整を行ったりする可能性があります。
- 矯正装置を誤飲する可能性があります。
- 装置を外す時に、エナメル質に微小な亀裂が入る可能性や、かぶせ物(補綴物)の一部が損傷する可能性があります。
- 装置が外れた後、保定装置を指示通り使用しないと後戻りが生じる可能性が高くなります。
- 装置が外れた後、現在の咬み合わせに合った状態のかぶせ物(補綴物)やむし歯の治療(修復物)などをやりなおす可能性があります。
- 顎の成長発育によりかみ合わせや歯並びが変化する可能性があります。
- 治療後に親知らずが生えて、凸凹が生じる可能性があります。加齢や歯周病等により歯を支えている骨がやせるとかみ合わせや歯並びが変化することがあります。その場合、再治療等が必要になることがあります。