矯正歯科治療が必要な代表的な歯ならびを挙げました。これですべてではありませんが、代表的な不正咬合とその特徴を紹介しますので、ご参考下さい。本来は治療前後の写真を掲載し、どのように治るのかまで、わかりやすく説明したいところですが、医療機関ホームページガイドラインには「加工・修正を行った術前術後の写真はホームページに掲載すべきでない事項」として挙げられています。また、効果に関する事項は医療広告ガイドラインにも広告可能な事項ではないとされています。治療について詳細を知りたい方は資料請求して頂くか、初診カウンセリングをお申し込み下さい。
でこぼこ・叢生
前歯がでこぼこ(凸凹)の状態になっている不正咬合です。
専門的な診断名では、叢生(そうせい)と呼びます。
- 永久歯が大きい。
- 歯のならぶアーチがせまい。歯列がせまい。
- 奥歯の位置が前にずれている。
などが原因として挙げられます。
一期治療で歯列を横に広げたり、部分的なワイヤーの矯正装置でならべたりします。そのことで、二期治療が簡単になったり、短期間で済んだり、必要なくなったりする場合もあります。また、二期治療で抜歯が不要となる場合もあります。
受け口・反対咬合・下顎前突症
前歯のかみ合わせが上下逆になっている不正咬合です。
一般的に受け口とも呼ばれているものです。
専門的な診断名では、反対咬合とか下顎前突症と呼びます。
反対咬合には、以下の5つのパターンが挙げられます。
- 上の前歯が内側に傾斜している場合(歯の位置の問題)
- 下の前歯が外側に傾斜している場合(歯の位置の問題)
- 上あごが小さい場合(骨格的な問題)
- 下あごが大きい場合(骨格的な問題)
- 上記の組み合わせ
一口に受け口と言っても上記のような原因によって対応は異なります。歯の位置の問題であれば、前歯が乳歯から永久歯に生え変わる段階で自然と治る場合もありますが、骨格的な問題がある場合には自然とは治らない場合が多いです。反対咬合には、骨格的な問題がある場合が多いため、比較的早め(6~8歳頃)の対応が望まれます。
お顔つきは親御さんや祖父母の方に似ますので、当然あごの骨格も似ます。下顎前突症は、遺伝的な要因も強く、ご家族や親せきに下あごが出た感じの方がいる場合には、骨格的な要因が疑われ、早めの対応が望ましいと言えます。
一部の歯が反対咬合になっている場合も、要注意です。
本来は、下の前歯にはほぼ垂直的に力が加わります。
しかしながら、左図の様な反対咬合の場合、下の前歯には正しいかみ合わせとは逆の方向に(内側から外側に)、咬む力が加わってしまうため、下の前歯が外側に押され、歯ぐきがやせてしまったり、歯がグラグラしたりすることがあります。歯ぐきのラインや歯の揺れ具合を確認してみて下さい。
図の方はすでに歯ぐきがやせてしまっていますが、こうなる前に対応したいところです。
出っ歯・上顎前突症
上の歯が出た不正咬合です。
いわゆる出っ歯とよばれているものです。
専門的な診断名では、上顎前突症と呼びます。
上の歯が出ていることや、あごが下がっていると言った顔のバランスなど、見た目の問題は当然大きいですが、
- 口が閉じにくく、口呼吸になる。
- 口呼吸になると、上の前歯が脱灰(白くなる、むし歯の初期)しやすい。
- 口呼吸になると、上の前歯が歯肉炎になりやすい。
- 下あごが小さい子の場合、気道が狭く、いびきをかきやすい。
などの機能的な問題もあります。
上顎前突症には、以下の5つのパターンが挙げられます。
- 上の前歯が外側に傾斜している場合(歯の位置の問題)
- 下の前歯が内側に傾斜している場合(歯の位置の問題)
- 上あごが大きい場合(骨格的な問題)
- 下あごが小さい場合(骨格的な問題)
- 上記の組み合わせ
それぞれのパターンで対応は異なります。 下あごが成長する時期(女の子は小学校のうちに、男の子は中学・高校ぐらいまでに)に治療できると、お顔のバランスが整えられるだけでなく、二期治療で抜歯をしなくて済んだり、呼吸状態が改善できたりすることもありますので、早めにご相談頂きたいと思います。
あごの曲がり・側方偏位・交叉咬合
あごやかみあわせが横にずれている不正咬合です。
咬みあわせの問題だけでなく、お顔も曲がっていることが多くなります。 専門的な診断名では、側方偏位とか交叉咬合と呼びます。
写真では上下の歯の中心がずれ(側方偏位)、奥歯のかみ合わせが片方は上下逆(交叉咬合)になっています。
小学校低・中学年頃では、骨格的に左右にずれていることは少なく、上あごの歯列の幅が狭かったり、ちょっとしたかみ合わせで横ずれを生じていたりする場合がほとんどです。骨格的なズレに移行する前の対応が望ましいと言えます。
小学校高学年以降になると、骨格的な側方偏位に移行している場合も多く、見た目にも顔も曲がっていることが分かるようになります。骨格的な問題がより大きくならないような対応が望ましいと言えます。顎関節症状も出ていることが多くなります。
側方偏位が著しい場合、成長終了後(18歳以降が多くなります)に外科的矯正治療を検討することになりますので、成長期のうちに対応したい不正咬合です。
歯ならび自体は凸凹などが少ないため、気付きにくいですが、
- 上下の歯の中心があっているか?
- 奥歯のかみ合わせは、上下逆になっていないか?
などに、注意してみて下さい
すき間・すきっ歯・空隙歯列
いわゆるすき間のある不正咬合です。
専門的な診断名では、空隙歯列と呼びます。
小学校低学年では自然な状態でもあり、犬歯が生えてきて自然と閉じる場合もあります。ただし、以下のようなものが原因ですき間が開いている場合もあります。
- 埋伏歯(歯が埋まって生えてこない)
- 埋伏過剰歯(余分な歯が埋まっている)
- 先天性欠如歯(先天的に永久歯が無い)
- 上唇小帯の高位付着(上唇とつながっているヒダ状の部分が上の前歯の間に入り込んでいる状態)
- 指しゃぶりなどの癖
- その他
埋伏歯と先天性欠如歯の場合は後述しますが、上唇小帯の高位付着の場合、乳幼児期に自然と切れてしまうことが多いですが、永久歯に生え変わってからも著しい場合は切除することもあります。
指しゃぶりなどの癖が原因の場合は、その癖の改善を行う必要があります。
いずれにしても、なぜ、すき間が生じているのかという診断が重要です。
前歯で咬み切れない・開咬(かいこう)
前歯が咬んでいない不正咬合です。
専門的な診断名では、開咬(かいこう)と呼びます。
前歯で咬みきれないため、横の歯で咬みきったり、舌と歯で切るように物を食べたりすることも多く、「滑舌が悪い」など発音(特にサ行)にも支障が出るなど、機能的な問題が多いことが特徴です。
お顔のバランスも面長傾向になり、下顔面(鼻から下の部分)が長くなるような成長方向を示すことが多くなります。
飲み込む時や発音時の舌を突き出す癖から生じている場合が多く、奥歯だけで咬む力を支えているため、奥歯の負担が大きくなります。そのため、奥歯の山がどんどん削れて平らになることが多くなります。
小学校低学年では、指しゃぶり等によるものと、単純に歯が生えている途中のものがあります。
小学校中学年以降で前歯が咬んでいない場合には開咬の疑いがあります。この時期の開咬は、飲み込むときに舌を突き出す癖によるものがほとんどです。自然と改善しにくいため、矯正治療に加えて舌の使い方などのトレーニングを行います。
二期治療の時期になると、マルチブラケットを用いて治すことになります。この時点で抜歯や非抜歯の判断を行います。
骨格的な開咬が著しい場合、成長終了後(18歳以降が多くなります)に外科的矯正治療を検討することもあります。
かみ合わせが深い・過蓋咬合(かがいこうごう)
前歯のかみ合わせが深い不正咬合です。
専門的な診断名では、過蓋咬合と呼びます。
正面から見た時に、下の前歯の見える量が少ないことが特徴です。
また、お顔のバランスもえらが張って、下顔面(鼻から下の部分)が小さい場合が多くなります。
一見して分かりにくい不正咬合ではありますが、咬みあわせが深いことで、下あごの運動制限が生じている場合が多く、顎関節症とも関連が深い不正咬合とも言われています。
また、過蓋咬合だけの場合は少なく、
- 上顎前突+過蓋咬合
- 下顎前突+過蓋咬合
となっていることも多いことが特徴です。
成長期に対応しておくことで、お顔のバランスを整えながら、二期治療を楽にすることができます。
永久歯が生えてこない
永久歯の過不足・永久歯胚の位置異常・埋伏
永久歯が生えてこない不正咬合です。
いろいろな原因がありますが、
- 永久歯の先天性欠如
- 永久歯の歯の位置異常
- 永久歯の埋伏
などが、挙げられます。
レントゲンを撮ってみないとわからない不正咬合です。
先天性欠如歯の好発部位は
- 上顎2番
- 下顎1番
- 上下顎5番
となります。(それ以外の部位の場合もあります)。
親御さんに先天性欠如歯がある場合、子供にも多く生じる印象があります。時期を見て乳歯を抜歯することで、欠如している部位に永久歯を誘導することができる場合があります。また、乳歯をそのまま使えるまで使う場合や、矯正治療で積極的に欠如歯のスペースを閉じるなど、様々な対応が考えられます。
埋伏過剰歯
図の方は、前歯の部分に余分な歯が埋まっています。
前歯の歯根が完成する時期まで待って抜歯することが多くなります。埋伏している場所にもよりますが、永久歯の歯根形成を阻害する場合があります。また、矯正治療で歯を動かした時に、歯根とぶつかる可能性もあります。
永久歯の埋伏・位置異常
下図の方は、左上3番(犬歯)が2番の上にあります。3番の歯の回りが黒くなっているのが分かると思いますが、これは嚢胞(のうほう)といって、袋状の病変があることで生えることができなくなっています。この場合、歯ぐきを切って3番を引っ張る開窓牽引(かいそうけんいん)という処置が必要となります。